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「………何だ?」  耳鳴りと言うか、頭の中に直接響いてくる様な──ファンタジーみたいな言い方をするなら、テレパシーで話し掛けられている様な、そんな風だった。 「幻聴……か?」  もし本当に幻聴だったとしたら、俺の思っている以上に体調は悪そうだ。幻聴や幻覚なんて類い、今まであった事が無いから、その程度については分からないが。  廊下を這うように進み、階段を転がるように下って、なんとか一階まで辿り着く。  そのままリビングに直行すれば良いのだが、その前に、洗面所で、自分の顔を見てみようと思った。親がいれば、何してるんだ、と怒られて、妹がいたらいたらで、甲斐甲斐しく世話を焼こうとして、きっと洗面所に向かう事すらも出来なかったろうが、今この家にいるのは俺一人。つまり、俺がどんな行動をしようと、誰一人として気にするヤツなんていないという訳である。  何の障害も無く(一番の障害は何より俺の体調だったが)、俺は洗面所に辿り着いて、鏡で自分の顔を見て、 「うわ…………」  絶句した。  目は真っ赤に充血して、下瞼には、絵の具でも塗ってるのかと言いたくなるぐらいにはっきりと隈が出来ていたからだ。
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