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 まるで、何日も寝ていない様な感じだ。前に、一日や二日、調子に乗って寝ない時もあったが、それでも、ここまで酷い見た目にはならなかった。  しかし、分からない。  俺は昨日、間違いなく、日付が変わる頃には蒲団に潜り込んでいた。そして、洗面所の壁掛け時計で確認したら、今は午前7時を少し過ぎただけ。つまり、七時間弱は寝ているはずだ。にも関わらず、俺の顔には、〆切に終われて働く社会人の如く、疲れきった表情が現れている。 「……夢遊病とかじゃないだろうな」  聞いた事があるだけで、実際の症状は知らない病名を口にしながら、洗面所の水道で顔を洗った。冷たい水を当てれば、少しは顔も思考もマシになるかと思っていたが、洗い終わった顔を見ても、全く変わっていなかった。  もう一度洗おうかと思ったが、やめた。普段と今は状態が違うんだから、薬を飲んでさっさと寝る方が得策だろう。  水道水を止めて、また這うようにして洗面所をあとにする。その時、 「──て────ぃ」  また耳鳴りがした。やはり、少女の声だ。そして、何かを言っている。 「─ゃ─き───さ───ば!」  それは、だんだんと大きくなる。
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