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灰色の部屋に2人の男が向き合うように座っていた
一人は軍服に身を包み漆黒の髪と紺碧の瞳の言うなれば刃のような青年:苓
一人はボロボロの服に身を包んだ亜麻色のふわふわした髪と金色の瞳の日だまりのような青年:類
そして金晴眼の青年の華奢な足首には床と繋がる重厚な足枷と鎖が巻かれ、二人の間には透明な硝子が空間を仕切っていた
何も話さない二人の代わりに面会時間を示す砂時計がサラサラと音をたてて時間を刻んでいく
「…………言ったはずだろ」
「…………」
窓硝子越しにアイツが悲しげに微笑する
そんな悲しそうに笑うアイツの頬に手を差し延べる事が出来ないオレが、どれだけ惨めかアイツは分かってない
アイツに触れたいと動く手を叱咤するようにオレは手の平を強く握った
「何で、………馬鹿正直に此処に戻って来てんだよッ!!言っただろ!?オレの事は気にすんなって!オレの事は、もう忘れろって!お前と二度と会う気はないって!!だから二度とオレの目の前に姿を出すなって!!約束しただろう!!!?」
「…………」
バンと硝子を殴るとアイツの顔が歪んでみえた
でも
どれだけ叫んでも、どれだけ硝子を叩いても
アイツは悲しげに微笑するだけ
ソレが拷問で受けた傷よりも
今まで受けたどんな痛みよりも
痛くて、苦しくて、辛くて…
オレはぼやけた視界でアイツを睨みつけた
「何か言えよッ!!なぁ類!!!何でだよ!!何で、戻ってきたんだよ!!」
「…………」
「ッΣ?!」
ふと手に暖かいモノが触れ、驚いて見ると他の警官の尋問でボロボロになった類の手が机と硝子の小さな隙間を縫ってオレの指先を握っていた
相変わらずの微笑をたたえたまま類はゆっくり口を開いた
「覚えてるよ?苓が言った約束、全部、ちゃんと覚えてる」
「じゃあ何で!!」
「だって、……君が…苓が……俺の所為で、捕まったなんて……俺の為に君が死ぬなんて…そんなの堪えられないよ」
ツゥと涙が類の青白い頬を零れ落ちた
「……類」
「それに、苓と俺が逆の立場でも俺達はきっと同じ事したよ?」
顔を歪めて笑う類はオレの指先を握る力を強めた
「……馬鹿野郎」
「ごめんね」
「馬鹿類」
「うん」
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