第一幕

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類は苦笑してから少し顔を俯かせて今までの経緯を淡々と話し始めた 話が進むに連れて類の手の力が強くなっていく オレがそっと類の指先に手をそえると類は少し驚いたように顔を上げ、そして、ふわりと微笑んだ 「逃亡先で暮らし始めてから一ヶ月、くらいかな?君が謀叛の罪で捕まったって聞いたのは…」 声のトーンが低くなり、類はオレの指先を握っていない手を強く握った フルフルと震える白い手からは赤い血が滲んでいる その手を握って、指を解いてやる事も出来ない オレは何て無力なのだろう 「怖かったんだよ…?…苓が居なきゃ、俺はッ……」 「………類」 悲痛な表情で硝子に手を伸ばす類 こんな表情をさせてるのはオレだ…オレの弱さだ…… オレは類を騙して人を殺させた糞野郎から類を護れなかった 冤罪の死刑判決から類を護れなかった やっと、この国から逃がす事が出来たのに こいつを理不尽な死から解放できたと思ったのに それを妨げたのは オレだ…… 類を護ると誓ったのに 結局 オレは 何一つ 類の何一つ 護れなかった 「苓……泣かないで………」 「る、い…」 顔を上げると硝子越しに涙を拭う類の姿 オレはその手に自分の手を重ねた 硝子越しに類の体温が伝わってくる まだ、生きてる 類は、オレの側に居る そう思うと 自然と体が動いた
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