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そのカメ吉が重い口調で言った。
「また、闘わなければいけないのでしょうか、カメ」
それを聞いた彼女が俯く。
「それだけは避けたいですね・・・」
重苦しい沈黙が暫く続くと、パッと顔を上げ今度は楽しげに語り始める。
「そういえば、今日、アリスが遊びに来るみたいですよ。また、楽しいお話を聞かせてくれるのかしら」
アリスは彼女の数少ない友達だった。
二人の出会いは、アリスがたまたま竜宮城に迷い込んだという、いきさつなのだが、
初めて見る外部の女の子を大切にしたかったという彼女の強い思いがあり、二人は仲良くなった。
アリスが友達になることで、彼女の外部情報は格段に増えていった。それまでは、たまに買い出しに出かけるカメ吉からの話だけだったのだが、迷子癖のあるアリスからの話は、ハラハラドキドキの連続で一味も二味も違った面白味があった。
テレビがある今でも、アリスの話は彼女にとって一番の楽しみなのである。
彼女も外に出れる。
然し、一度も出た事の無い外の世界は恐怖だった。
そう、彼女は外に出た事が無いのである。
カメ吉やアリスの話を聞いても一歩が踏み出せなかった。
出たく無い訳ではない。けれど、今までずっと閉じこもっていたから、その殻を破るのが、断片的にしか知らない世界へ出るのが恐ろしかったのである。
何かきっかけが、出たいと思える程のきっかけが、彼女は欲しかった。
カメ吉も友達のアリスも彼女の為に何か無いかと模索していたのである。
彼女の名前を乙姫という。
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