「彼」

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夜。 黒髪で黒縁眼鏡をかけた彼は道のど真ん中で立ち止まり、壁を見て得に何もせず、ただただ壁を見ていた 「あ~、何て言うか」 すると彼は壁を見たままそう呟くとふむ、と何か納得したように顎に手を当て、仕方ないかと言ったように壁の方に近づき… 「君、大丈夫?」 …と壁に向かって喋りかけた もし、今この場に誰かがいたのならば逆に「君が大丈夫か?」と言われそうだが幸運な事に今彼の近くには人気は無く、ただただ彼の声だけが響いた だが。彼にだけは別に声が聞こえていた 『…グスッ…お兄ちゃん…誰?』 「通りすがりのお兄ちゃん」 泣き声が混じった小さな子供の声 それに対して彼は答えになっていないような言葉を言うとその場にしゃがみ込み、‘彼に見える’何かを見ながら口を開いた 「どうして君みたいな小さな子がこんな夜中に一人でいるのかな?」 彼は優しい声で、自分の中ではわかっている事をあえて彼に見えている小さな子供に質問すると彼の考えてた通りの返事が帰ってきた 『わかんない。気がついたらここに居たの…』 小さな子供はそう言うとまたグスグスと鼻を鳴らし、涙を流した
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