しゃぼん玉

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俺の父は、もうすぐ死ぬ。    〈しゃぼん玉〉   ゆらゆらと、頼りなく 風に乗って、虹色の玉が上がっていく。 父手製のストローから思いきり液を吸い噎せる俺を見て、父はただ可笑しそうに笑った。 『はは、大丈夫か? もっと、優しくやらなきゃ駄目だって。』 見てな、と父がフウッと空へしゃぼん玉を飛ばす。 風に乗って漂う沢山のしゃぼん玉を触ると、音もなくそれらは壊れてしまった。 『てぇ、べたべたするー!』 『ん、ほら。』 出されたタオルで手を拭いても、尚懲りずにストローに手を伸ばす俺の頭を父が撫でる。
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