0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の父は、もうすぐ死ぬ。
〈しゃぼん玉〉
ゆらゆらと、頼りなく
風に乗って、虹色の玉が上がっていく。
父手製のストローから思いきり液を吸い噎せる俺を見て、父はただ可笑しそうに笑った。
『はは、大丈夫か?
もっと、優しくやらなきゃ駄目だって。』
見てな、と父がフウッと空へしゃぼん玉を飛ばす。
風に乗って漂う沢山のしゃぼん玉を触ると、音もなくそれらは壊れてしまった。
『てぇ、べたべたするー!』
『ん、ほら。』
出されたタオルで手を拭いても、尚懲りずにストローに手を伸ばす俺の頭を父が撫でる。
最初のコメントを投稿しよう!