おもいで

2/3
前へ
/154ページ
次へ
 頭が焼ける。  身体にまとわりつくヘドロを、必死に振り払おうとする、天使がそこにはいた。彼女は人間の白眉だった。  踊るように回っていた。滑稽で醜悪で、意気銷沈した。  次に苛まれたのは、宇宙の居丈高な気迫に、怖じ気付く自分への憎悪。だから人間個体を呑み込んだ。  最後に崖から落ちた彼女を、宛ら悪魔のような神は許しはしなかった。  ただ逃避するだけの毎日。矛盾の境界線に立つのが怖い。  人間の軋轢。葛藤。それらがかつての歴史を翻す。もう人は乖離されない。  踵をめぐらせても道に難渋するだろう。  臥薪嘗胆。  ただ、1人のために。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加