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「HCLとHNO3が3:1の割合であります」
プラチナだろうと金だろうと溶かしてしまう、王水。
それが入ったらしきそのそれを片手に
「ねぇ……君」
きょんは柊人に呼び掛ける。
「名前……なんだっけ?」
やはり『まるで』天使。
「は? どうしたんだよ恭子ちゃんまで……」
すると、ふと後ろから肩に手が置かれる。
咲哉だと思い振り返ると
不良だった。
「お前まで……」
「お前じゃないだろ。俺様は五十嵐剛だ」
五十嵐剛(イガラシ タケシ)は海斗をボロボロにした不良のことである。
「これ……見てみろよ」
見せ付けられた写真は、吐き気どころでは済まされず、大きく喘ぎ泣いた。
海斗が溶かされゆく写真である。
友が苦痛に悶える連続写真は、この世の物とは思えなかった。
音を立てて柊人の心は崩れていく。
「そろそろ退院している頃じゃないかな?」
きょんは優しく教えてあげる。
繰り返す嘔吐。
柊人は海斗の家へと走っていた。
……………………………………
「かいとぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「近所迷惑だよ?」
何者かに襟首を掴まれ、そこでこと切れたように意識を失う。
ばたん。遠退きと共にドアが閉まる音を最後に柊人の意識は闇へと飲まれていった。
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