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簡単に説明すると、ある『幻想御手』というものがあり、それを使えば能力者のレベルが文字通り上がるという訳だ。しかしその代償として意識不明になる能力者が出始めたのだ。
「レベル0の私もその話を聞き、使ったんですよ。『幻想御手』を…」
「そっか…」
なんとなく、その先の予想がつく。
「その時に発現した能力が…『風力使い』だったんです。初めて能力が発現した時は凄い嬉しかった」
「でも、意識不明になるっていう話を聞いて、怖くなったんです…。自分もそうなっちゃうのかな、二度と目を覚ませないのかな、って…」
…、
そういう佐天さんの顔は、泣き出しそうな顔をしていた。
だから俺は、彼女の頭をそっと撫でてやった。
「…?」
佐天さんはびっくりしたような顔で俺を見てきた。その顔にはまだ涙があった。
「怖かっただろう、辛かっただろう、そういう時は、いくらでも泣いていいんだ。そして涙を流して終えたら、また前を見て歩きだせばいいんだ」
俺も兄貴を失った時は泣いた、目が腫れるほど泣いた。
そして一年後、俺はまた歩き出したんだっけな。
「今はどうだ?まだ辛いか?」
俺は聞く。
「い、いいえ大丈夫です!…ありがとうございます…」
「なら、良いんだ」
そうして、俺達の時間は過ぎていった-
-「ここはどこだ?」
アルビオ=マグナックは、未だに街をさまよっていた。ちなみに今は地下街を歩いている。
「クソッ!あのガキはどこにいんだよッ!!」
流石にイライラが募ってきたアルビオだった。
そうやって舌打ちをしながらアルビオが歩いていると、遠くに一人の少年の姿が見える。
その後ろ姿を見て、アルビオの表現はイライラのたまっていた顔から獲物を捉えた狩人のものに変わっていく。
「やっと見つけたぜ、クソガキが…」
獲物を見据えたアルビオは、その後を追うように歩いていった-
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