歪んだ卵

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『…ねぇ葵聞いてる?ねぇってば!!』 目の前の女…森谷 朱美の声で私は思考の沼から現実に引き戻される。 「う、うん聞いてる聞いてる。 で…朱美なんだって?」 そういうと朱美はこれ見よがしに溜め息をついた。 『もうっ!!やっぱり聞いてないじゃん。 だ・か・ら!!最近…真中さんが会ってくれなくてさー。 久しぶりに会えても妻が妻がって言って構ってくれないのよ。 葵どうしたらいいと思う?』 そんな事私に聞かないでよ。 っていうかそもそも…。 「ねぇ…。不倫って何が楽しいの?」 そう言って朱美の顔を見ると、また言ってるというような表情をしていた。 『いつも言ってるじゃん。 私だって不倫したくてしてるわけじゃないんだってば。 気が付いたらその男性に惹かれちゃうんだよ。 普通の恋と同じよ。 ただその相手が妻子持ちだったってだけ。 だから恋の楽しみも悲しみも普通の人と何ら変わりない。 好きになっちゃうもんはしょうがないじゃん。』 …の割に普通の人よりも悲しい顔ばっかしてるくせに。
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