“七夕に棚ぼたならぬ棚妖刀”

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「――――それで、何でお葬式から一週間も忌引きなのかね、君は」 ――七月十四日。 世間一般には、――そう、七夕の一週間後という位置付け。 特に何も無い、いたって日常的な一コマの日。 「いやあ、祖父って結構人脈が広くって。――関係各社や、今は引退した人とかにご報告を……」 右手にペンを、左手は作文用紙を押さえ、ただいま絶賛反省中。 ――つまりは、反省文を書かされている。 「葬儀に一同集まるだろさ。――そんな音信不通の人とかいるさね? この現代に」 そしてここは保健室。 通常なら生徒指導の教師が、生徒指導室でみっちり叱られるのだが――。 「戸籍上、生きている人ばかりでして。――あ、因みに葬儀は親族だけで執り行いました」 今、生徒指導室は、来賓客のために使用しているらしい。 常時開いている部屋と教師は、保健室と、そこの主。 保健教師の江崎先生。 つまり、しわ寄せというか、厄介事を押し付けられたという訳だ。 そうして、暇を持て余し、怠惰に暮らしてきた江崎先生にとって、厄介事を押し付けられれば不満も仕方無いだろう。 いや、仕事しろよ。
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