“七夕に棚ぼたならぬ棚妖刀”

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「お、小木曾先輩……!?」 現れた男はこの学校の副校長。小木曾・勤。 ――因みに、江崎先生とは同じ学校の出身で、先輩後輩の間柄らしい。 「副校長と呼べ。――彼の担任から、保健室で反省文を書かされていると聞いてな。見にきてみればこの様とは……」 「あ、あはは……、それで小木曾せんぱ――、副校長? 用事が済んだのでしたら私はこれで――」 踵を返してそそくさと逃げる江崎先生の白衣を掴み、引き戻して睨み付ける。 「良いわけがないだろう! 君は学校を――、保健室を何だと思っているんだ!? ――全く、学生気分が抜けていないのではないのか!?」 「ヒーッ!? 先輩がキレたーっ! ――――じ、じゃっ、わわ私は逃げるから、後はよろしく!!」 忍者のように、白衣を囮にして抜け出し、猫並みの俊敏さで窓から飛び出す。 その先には木が立っており、その枝に捕まると猿の如き器用さであっという間に降りて、窓からは見えなくなる。 その器用さと運動能力があるのであれば、保健ではなく体育教師にもなればよかったのに。
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