168人が本棚に入れています
本棚に追加
明け方の薄暗い街中…
沈黙をしたままの2人は、どこへ向かうでもなくただただ雨に打たれながら歩いた。
由美「傘…ありがとう…」
由美は下を向きながら小さく口を開いた。
和也「なんのことだよ?」
和也はとぼける様に言った。
由美「置いてってくれたじゃん…」
和也「置いてってなんかねーよ‼ただ…捨てたっつーか…それより傘は??」
由美「あっ…無くした…ゴメン…」
和也「はぁ?こんな短時間にどこで無くせるんだよ…」
和也はため息をつきながらタバコに火をつけた。タバコを持つ右の手…ライターを持つ左の手…
和也「あっ‼‼‼リトルっ‼‼‼」
由美「a little⁉」
和也「カブだよカブ‼‼‼原チャ、コンビニに置きっぱだ…あっ、そうだ❗」
和也は思い出したかの様におもむろにバックからボアコートを取り出し由美に突き付けた。
由美「なに…これっ…??」
和也「……こないだバイト先に忘れてた服だよ…。いいから早く着ろよ、風邪引くぞ…」
由美は濡れた服の上からボアコートを羽織った。
ボロボロにプリントが剥がれたボアコート…
その胸元にわずかに見える文字…
『…野…中サッ…ー部』
由美「…ありがとう……温かい…」
長期間衣装ケースにしまい込み、防虫剤の匂いが染み付いたボアコートは、濡れた服の上からでも温かさを感じられるものであった…
最初のコメントを投稿しよう!