雨音

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明け方の薄暗い街中… 沈黙をしたままの2人は、どこへ向かうでもなくただただ雨に打たれながら歩いた。 由美「傘…ありがとう…」 由美は下を向きながら小さく口を開いた。 和也「なんのことだよ?」 和也はとぼける様に言った。 由美「置いてってくれたじゃん…」 和也「置いてってなんかねーよ‼ただ…捨てたっつーか…それより傘は??」 由美「あっ…無くした…ゴメン…」 和也「はぁ?こんな短時間にどこで無くせるんだよ…」 和也はため息をつきながらタバコに火をつけた。タバコを持つ右の手…ライターを持つ左の手… 和也「あっ‼‼‼リトルっ‼‼‼」 由美「a little⁉」 和也「カブだよカブ‼‼‼原チャ、コンビニに置きっぱだ…あっ、そうだ❗」 和也は思い出したかの様におもむろにバックからボアコートを取り出し由美に突き付けた。 由美「なに…これっ…??」 和也「……こないだバイト先に忘れてた服だよ…。いいから早く着ろよ、風邪引くぞ…」 由美は濡れた服の上からボアコートを羽織った。 ボロボロにプリントが剥がれたボアコート… その胸元にわずかに見える文字… 『…野…中サッ…ー部』 由美「…ありがとう……温かい…」 長期間衣装ケースにしまい込み、防虫剤の匂いが染み付いたボアコートは、濡れた服の上からでも温かさを感じられるものであった…
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