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和也は大きな叫び声を上げ携帯を布団に投げつけた。
【母から電話がくる度によみがえる幼い頃の断片的な記憶…
真っ白なモヤの中…
「必ず迎えにくるから」と動く母の口元…
母に謝られる度に思い出す…
あの忌まわしいほど鮮明に覚えている夏の公園…
幸せそうに笑う母と知らない男と子供…
人がショックを受けたときに呆然と立ち尽くしソフトクリームを落とすシーンは映画やドラマで何度も見てきたけど…
まさか自分もソフトクリームを落とすなんて思わなかったよ…
母さんはその日の夜に電話をかけてきて、何度も何度も「ゴメンねゴメンね」って繰り返しながら鳴いていたよね…
母さんのゴメンねは安すぎるよ…
母さんの涙は安すぎたよ…
電話で母さんはいつまでも鳴き続けるけど…
あの公園で泣き続けたのは僕だったんだ…
あの時目をそらした母さんはきっと…
セミが泣いていた様にしか思わなかったんだよね…
だから僕はあの日以来…
泣くことをやめたんだ…】
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