†退屈な毎日と変わりゆく日常†

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 ひらりはらりと桜が咲き誇る春。そろそろ桜は散りゆくが、それもまた一興だと思える。始業式が終わり、最上階の二年一組の教室で気怠そうに机に突っ伏し、顔だけ窓の外へ向け退屈そうに空を見渡す少女。静かな教室に一人、空気が流れ行く音だけを訊く。  携帯を取り出し、空を写す。カシャッ! という音を出して画面に空を写し出す。青空と雲のコントラストが何ともいえぬ美しさを醸し出している。 「綺麗な空……」  画像を携帯に収め、画像ではなく現実(リアル)の空を見て少女はそう言った。  少女はパタンと携帯を閉じ、長くもなく短くもないセミロングの髪をかき上げて体を起こした。サラサラな髪は指をスルスルと通り抜け、引っかかることなく指から離れていった。  少女の名前は夜星 七羽(よぼしななは)。本人曰わくけっこう気に入っている名前である。幼なじみの音葉 小唄(おとばこうた)や親しい友人に名前を呼ばれる度に、何ともいえない嬉しさが心の奥からグッと込み上げてくる。 「七羽ぁ~、どうしたの?」  名前を呼ばれてふと我に返る。 「えっ、あっ、ううん、何でもない。ねぇ、小唄。今から一緒に学校の中を探索してみない?」  まだ幼い顔をキョトンとさせ、クリクリした綺麗な瞳で七羽を見る。そしてパッと子供のような笑顔を見せて頷いた。幼さが滲み出る理由として小さなサイドポニーと、羽模様のヘアピンが挙げられるだろう。 「うん、良いよぉ! 小唄ね、七羽と探索するの大好き!」  小唄の笑顔に癒されつつ席を立つ。七羽は放課後に小唄を誘っていろんな場所へと足を運んでいる。小唄も嫌がる様子はなく、むしろウキウキしながらついてきてくれる。  そんな子犬のような小唄の頭を撫でてやると子犬のように喜ぶ。 「今日は、そうだなぁ……」 「旧校舎の美術室に行ってみない?」  珍しく小唄が七羽に提案し、七羽はキョトンとした。そしてすぐぱぁっと笑顔になる。 「あっ、それいいね。じゃあ行こうか!」 「何があるのかなぁ、ワクワクするね!」  無邪気な笑顔でそう言う小唄を見て七羽は期待とワクワクでクスリと笑った。
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