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海が異世界で初めての夜を過ごして一週間、海とザッツは乗合馬車で王都へと向かっていた。
海とザッツしかいない馬車の中、海は黒狼の毛皮を布団にしてお昼寝の最中。
幌付きで風通しの良い馬車は恰好のお昼寝場所だ。
ザッツはそんな海を見て「揺れる馬車で横になって、よく寝られるもんだ」と苦笑いしている。
カロカ村を出る際、海は下着や食料品・幾ばくかの路銀と黒狼の毛皮をジルから餞別に頂いた。
海は世話になりすぎと断ろうとしたが、ジルは頑として譲らず海が折れる形になった。
黒狼の毛皮は王都で高値で取り引きされるらしく、無一文の海としては多少気が引けたが有り難く頂戴する事となった。それも今は布団代わりだが。
「旦那、お嬢ちゃん、王都が見えてきやしたぜ!」
御者のおじさんが馬車の中にいる二人に声を掛けた。
ちなみのこのおじさんは、海とザッツを見て『貴族のお嬢様とその護衛』と思っていた。
見てくれだけなら美少女な海、深窓の令嬢と言っても差支えがない雰囲気も持っている。
・・・本人はただ眠いたいだけなのだが。
ザッツと起こされた海は身を乗り出して、草原に鎮座した壁・・・城壁に囲まれた王都を見た。
「・・・・・・おおぅ~」
城門を超えて御者のおじさんと別れた後、まずは毛皮を換金しようということになり、人が一際賑わう一角へと案内された。
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