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気が付いたらそこにいた。
見渡す限りの大草原。
彼女は自分の格好を確認する。中学のセーラー服、鞄、携帯に手鏡に生徒手帳。その他諸々。
手鏡を覗くと眠たげに眉が降りている、プラチナブロンドのショートカットで見慣れた顔。
彼女の名前は春野海(はるのうみ)、15歳の中学生。フランス人の祖母を持つクォーターだ。
「・・・・・・あるこ」
呟いて、彼女は適当に歩き出した。
自分の置かれた状況に戸惑いはないのだろうか?
否、考えるよりもまず自分の安全と食糧確保が先だと判断しただけだった。
しばらく歩くと遠くに人影を見つけた。何やら走っていたようなので、自分も見失わないようにと走り出したところで気が付いた。
・・・・・・速過ぎる。
自分の能力を正確に把握している彼女は、自分の速力が大幅に強化されている事に気が付き、そして、
(・・・・・・ま、いっか)
特に疑問に思わず、そういうものだと納得した。
考えてわからなそうなものは、早々に切り捨てるのが彼女の処世術らしい。
最初は点だった人影も、すぐに古めかしい服をきた女性だとわかったが、そこで新たな影が乱入した。
近くの林から4つの影が躍り出て、女性に向かって飛び掛ろうとしていたのだ。
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