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『隊長』の言葉に反論できず、ギリリッと強く唇を噛むアレイディア。
彼女の敗因はアレイディアの言う通り、実戦でありながら試合や決闘といったルールある戦いだと勘違いしたこと。
逆に海は基本的に『勝てば官軍、面倒嫌い』主義なので、やり方に拘らない。
なのでアレイディアの相手が面倒だと思った海は、敢えてヴォルプスを手元から離して相手の死角で変化、『隊長』やアレイディアに気づかれぬよう忍び寄らせたのだ。
「さて……海ちゃん、この勝負はアレイディアの負けね。良かったらこの子を退けてもらえないかしら?
手は出させないし、アレイディアって結構プライド高いから、この格好はなかなかに屈辱的だろうしね」
「……ん。ヴォルプス、いいよ」
素直に了承した海がヴォルプスに目をやると、ヴォルプスは首筋から牙を離してサッと海の横に舞い戻った。
「……申し訳ありません、隊長」
開放されたアレイディアは『隊長』の前で片膝を着き深く頭を垂れるが、『隊長』は励ますように肩を叩く。
「いいのいいの、勝敗は元々気にしてないから。
貴女にも良い勉強になっただろうし、楽しませてもらったわ。
……ふふ、それじゃ次は私の……」
「海さーーーっん!!」
場を切り裂くように上がったその声に『隊長』の肩眉が跳ね、口元で小さく『やばっ…』と声が漏れた。
現れた声の主はガルフを伴ったシルフィオナだった。
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