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シルフィオナは真っ直ぐ海の傍までやってくるとその無事な姿に安堵し、次に侵入者二人……特に隊長の方を鋭い目で睨みつけた。
エルフのエレンに向けるような子供っぽい敵意ではなく、歳不相応の酷く冷淡で刃のような鋭利な敵意を込めた視線。
こういった姿はやはり、高等な教育と権力、それに伴う責任を持って生まれた高位貴族をして流石と言わざるをえない。
「やはり貴女方でしたか……」
「あっちゃ~~……思ったより早かったけど、どうして私たちってわかったの?」
『隊長』とシルフィオナは互いに面識があるようで、剣呑な雰囲気(主にシルフィオナが)ながらも話は続く。
「屋敷にいる賊を一人捕らえて顔を見ました。
最初はわかりませんでしたが、それが見覚えのある、そして見た場所を思い出した時理解できました。
後は簡単です、屋敷にいる賊は私に手出しは出来ませんから、真っ直ぐここまで包囲を抜けて歩いてきただけです」
「あらら、それは仕方ないわね……まぁ足止めも正体がバレナイことが前提だから、しょうがないか。
やっぱり演習代わりに新米を多目に連れて来たのが仇になったわね~」
恐らく全て状況を理解できているだろう二人(と組み敷かれている一人)だが、海には何の事かさっぱりだ。
「……どういうこと?」
そこで説明を求めるべく、シルフィオナの袖を小さく引っ張りながら問いかける海。
「あ、海さんにはわからないですよね……ええと、まず屋敷で捕らえた賊と言うのがですね、お恥ずかしい話ですが……この国の騎士だったんです」
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