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「…………棋士(きし)?」
ぼけた訳ではなく、親戚に本物の棋士が居て身近なため間違えた海。
「はい、騎士(きし)なんです」
それは違う!……っと突っ込める者がおらず(呼称される職業などがない)、呼び方だけは同じなので双方ズレに気が付かぬまま話は進む。
「その方、つい先日私も出席した新任騎士の受勲式で見た方のうちの御一人だったんです」
「受勲式……」
海の中では段位を証明する賞状みたいなのを貰っている図が、勘違いとともに浮かび上がるがシルフィオナは勿論気が付かない。
「騎士と言っても全て騎士団に所属している訳ではなく、このような暴挙を易々と行うのは……貴女が組織した部隊しかいませんよね?
ファールス王国第二王女フォーリナリア・ヘルム・ファールス様?」
「……王女?」
「はい、王位第三継承権を持つ正真正銘の王女です」
城の赤い絨毯の上で将棋盤を打つという、よくわからない想像をしていた海は王女という言葉に現実に引き戻され、改めて視線を『隊長』に向ける。
人を食ったような言動と悪戯好きの子供のような雰囲気だが、確かに動作の一つ一つは流麗で且つ優雅さを感じさせ……
「うっそだ~」
正直すぎる海からは即答で否定の言葉が出た。状況によっては不敬罪でしょっぴかれても文句は言えないが、当の『隊長』改めフォーリナリアはむしろ機嫌良さそうに笑う。
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