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「ちょっと物足りないけど今回の目的は達成したし、そろそろ帰りましょうか……そういうわけで、撤退の指示お願いね?」
「御意」
特定の誰かを見るでもなく発した言葉に答えたのは、何時の間にかアレイディア達の背後に傅いていた黒衣の男。
だが直ぐに物陰へと滑るように移動し、瞬く間に全員の視界から消えた。
「ほぅ、あれが噂の……」
「だれ?」
シルフィオナの後ろで沈黙に徹していたガルフの呟きに海が反応した。
「……大陸随一と言われた暗殺者、“影”です。
その本当の名前も、出自も誰も知らないと言う暗殺者。
どうやって引き入れたのかはわかりませんが……」
ガルフの代わりに答えたのはシルフィオナだが、その顔はやや青ざめている。
確かに“影”の存在感はここにる誰より希薄で、それでいて異質だった。
そんな男をどういう手立てを持って仲間にしたにせよ、フォーリナリアの器の大きさが窺い知れる。
「それじゃアレイディア、帰りましょうか?
あ、シルフィちゃん言っておくけど、父上や評議会に今回の事を報告しても無駄だからね?
無茶をするなりの根回しはしているし、エルフィール家が得するように色々取り計らう約束してるからね」
「……そうですか、つまり、お父様も今回の事は前もって承知という訳ですか……」
ガックリと肩を落として項垂れるシルフィオナと、黒衣の懐を探って何やら取り出すフォーリナリア。
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