4363人が本棚に入れています
本棚に追加
「それから海ちゃんには、これ!」
「……?」
フォーリナリアが取り出したものを海に向かって放り、危なげなくそれを右手で掴んだ海が見たのは鞘に収まった短剣。
実用的なものではなく、華美な装飾の施された儀礼用の短剣で柄にファールス王国の紋章が彫り込まれている。
「それがあればお城に入り放題だし、国内外でもそれなりに便宜を図って貰うことが出来るわ。
それから私の部隊の一部も好きに使っていいから。
ま、今回のお詫びとお礼と今後もよろしくの粗品ってところかしらね」
「姫様、そういった物は簡単にお渡しする物では……」
フォーリナリアが渡したのは自身の権限を代行して行使できる、本来は他国との交渉事の際に勅使などが渡される重要な物。
それをアッサリと渡すフォーリナリアにアレイディアは頭を抱える……アレイディアの苦労が忍ばれるような場面である。
「じゃまたね、海ちゃん、シルフィちゃん。
今度は美味しいお菓子でも食べながら親睦を深めましょう……海ちゃんに関しては剣でも良いけどね?」
「……めんどい」
海の返答を聞いているのかいないのか、笑顔で手を振って悠々と正門へと向かうフォーリナリア。
「本日は大変申し訳ありませんでした。
後日改めて謝罪とお詫びに伺いますので、今日はこれで失礼させて頂きます」
再度深くその場の一同に一礼し、アレイディアもその後を追って行ってしまった……
最初のコメントを投稿しよう!