一行、南へ

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フォーリナリアの襲撃から早一ヶ月半……海達はエルフの里を目指し、農産国家グラストを更に南へ進んでいた。 エルフの里はグラストの最南端に広がる大森林、通称“夢幻の森”といわれる場所に存在してるという。 既に海達はその夢幻の森に一番近いという町、“フォレスタ”に近付いていた。 海達がファールス王国の王都を出発してからまだ一ヶ月、本来なら広い大陸の南端に辿り着くのは不可能だ。 歩きは論外だし、馬車でもとても間に合わない。この短期間での到着は五大貴族エルフィール家当主、ジン・エルフィールの力があってこそだった。 大陸の移動は基本的に徒歩か馬車、場所によって船や特殊な魔獣を使うなどがあるがジンの取った方法は最後の魔獣を使ったものである。 ガルーダと呼ばれる巨大な怪鳥を飼い慣らし、魔法で暖めた空気で浮く乗り物(元の世界で言うところの気球)を引かせて高速で移動するというものである。 ……とはいってもガルーダは性格こそ温厚な部類であるものの、その爪や嘴、強靭な体躯はレッサードラゴンを優に凌ぐ戦闘能力を持つ。 飼い慣らせたガルーダは五大国合わせて僅か三匹で、これを五大国が出資して出来た専門組織が飼育。 そして気球を引かせて五大王国の首都巡回し、時に急務が有れば人や者を運ぶ。 今回はジンの権力により王都でガルーダに乗り、僅か一週間でグラストの王都に到着。そこでジンは元々の政務があるので留まる事に。 そして娘のシルフィオナだが……こちらは海について行く気満々だったのだが、流石に危険が伴う旅になるのでジンによって止められてしまった。 涙目で睨まれたジンは損な役どころだったであろう。
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