一行、南へ

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そしてフォレスタを前にした現在、海一行のメンバーはというと…… 「スゥ……」 揺れる馬車の中で、鞘に収まったヴォルプスを枕代わりに安らかな寝息を立てる海。 「相変わらずよくこんな場所で寝られるな、お嬢は……」 それを呆れた目で見るのは戦斧の巨漢冒険者、ザッツ。既にレッサードラゴンによる傷も完治している。 「ふぉっふぉっふぉ、寝る子は育つ……良いではないか」 「キュ!」 年齢を感じさせる深い皺を緩めながら笑うのは魔法具店の店長カールと、肩に乗るリスの使い魔リリィ。 「お姉ちゃん、緑の匂いが濃くなってきたね!」 「ええ、もう里は目の前ね……」 馬車の窓から身を乗り出して会話しているのは、エルフの姉弟であるカイルとエレン。ただ里を目前としているというのに、カイルと違ってエレンの方には元気がない。 里を離れた経緯は黒影団に捕まり奴隷として商品扱いされた為だ、本人にも思うところが色々と…… 「(うう……帰れるのは嬉しいけど、嬉しいけど……確実に怒られる……!?)」 ……どうやら、里の衆の御怒りが怖いらしかった。 元々森の外へ出ることは極一部以外禁じられているにも関わらず、弟まで巻き込んだ挙句人買いに捕まったのだ。 勿論帰郷は手放しで喜ばれるだろうが、その後に待つお説教がエレンは怖い…こういったところは歳、ではなく、見た目相応の子供といえる。
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