一行、南へ

7/18
前へ
/233ページ
次へ
===== === = 海とザッツ(正確にはザッツに担がれた海)、そして大剣の姿だと海に不釣合いで目立ち過ぎるという事で狼の姿になったヴォルプスはほどなく騒ぎの中心へとやってきた。 何てことはない民家の通り。だがその一角は壁が崩れ血が飛び散り、先んじて到着していた衛兵達が体のアチコチに傷を作りながら剣を向けている。 その切っ先の向うには…… 『グルルルアアアアアァァァァァァ!!』 それは、何とも形容しがたい異形の魔物。 体長は約2メートル、前傾姿勢ながらも2本足で立っている。顔は狼のような犬のような、はっきりとは言えないが獣の様である事は間違いない。 そして口からは鋭い牙、手から凶悪な鈎爪が……これだけならまだ普通の魔物で通せるだろう。 だがそれ以外の部分は異様としか言いようがなかった。 体は筋肉質かと思えば極端に細かったり、逆に筋肉が有り過ぎて巨大な出来物のようになっている箇所があったり。 基本的に黒い毛に覆われているものの、体毛が無く剥き出しの筋肉が脈動している部分が多々あったり。 姿を写す筈の瞳は白く濁りその役目を果たしているとはとても思えない。 とても自然界に存在する生き物とは思えない……海もそう思ったのか、一応面倒臭そうな表情は引っ込めてザッツに尋ねる。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4363人が本棚に入れています
本棚に追加