一行、南へ

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この時妙に衛兵が緊張していたのは、有名な冒険者であるザッツがいたからか。 はたまた、ちょっとふくれっつらで大剣形態のヴォルプスを片手で振り回す海が近くにいたせいか…… 「こ、こちらです、どうぞ……」 「おう、ご苦労さん。オイお嬢、そのでけえ剣を置いとくかペットにしとくかどっちかにしろ。 屋敷はこじんまりしてるがそれなりに金かけてそうだからな、何かの拍子にぶつかって壊して弁償とかになるぞ」 「ん、了解……ヴォルプス」 海の呼びかけに応える様に光を放ちながら輪郭を変え、狼の姿へと変わるヴォルプス。 「ここで待ってて」 「ウォン!」 衛兵は驚きのあまり目を見開いたまま反応する事が出来ず、屋敷の中へ入っていく二人を目で追うことしか出来なった。 そして直ぐに客間に通された二人は、テーブルを挟んで置いてある二つのソファーに座る人物を目にする。 壮年の男女、一人はふくよかで穏やかな表情の男性。もう一人は対照的に線の細い印象を受ける、神経質そうな顔をした女性だ。 二人は並んでソファーに座り、海とザッツの対面のソファーに座るよう無言で促してきた。 ポフン! 「……おお、柔らかい。それになんだか……緑の香りがする」
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