一行、南へ

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……そんな二人の前でも特に緊張した様子も無くソファーに腰を下ろした海は、その感触を味わいつつ漂う香りに目を細める。 「ははは、分かりますかな? この町の特産の綿を使っているのですよ。 他の場所で取れる物より感触が良く、香りもするという素晴らしい物です……おっと、申し遅れました。 私、この町の町長を務めておりますコリンズです。以後お見知りおきを」 「ウミ・ハルノ、よろしく」 「ザッツだ」 恰幅の良い男性…町長のコリンズの自己紹介に二人がそれぞれ答えソファーに腰を下ろす。それを見計って女性が口を開いた。 「海にザッツ、『眠り姫』ってパーティーネームのコンビだね、噂位は聞いてるよ。 ザッツはともかく、お嬢ちゃんの方は本当に噂程度にしか思ってなかったんだけど、なかなかどうしてやるもんだね。 ああ、ウチはグラスト王国冒険者ギルド・フォレスタ支部支部長のサランだ」 サランと名乗った女性はギルドの支部長、つまり既に海とザッツに関する情報はある程度持っているという事だ。 組み合わせや外見、それに実力など何かと目立つコンビなので町について早々でも特定するのに時間は掛からなかっただろう。 「ギルドのお偉いさんがそっちにいるなら面倒な自己紹介は必要ねえな。 単刀直入に聞くが、この町で何が起きていて俺達に何をさせてえんだ?」 ズバッと切り込むのはザッツ、それに対してサランが僅かに眉を顰める。 「やれやれ、短気な男だね」 「まぁまぁ、確かに余計な説明に時間を掛けている事態ではないのは確かですから、こちらとしても手間が省けて助かるではないですか」
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