一行、南へ

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特に南門からの道は“夢幻の森”へ続くのみの、言ってみれば人里へと向かわず主要な街道からも外れた荒れ道だ。 道の状態や野党などよりも野生の獣が多く出没する危険地帯、視界の悪い夜はいっそう危険が増してしまう。 その為、一夜を町で明かしての翌日からの出発となった。 フォレスタから“夢幻の森”までは馬車で約一日程。一度動きを止める夜を挟めば、明日の夕方にはついている計算だ。 「里の皆は大丈夫でしょうか……」 馬車の窓から顔を出して風景を眺めていたエレンが、おそらく自覚なく呟いた言葉に隣にいたカイルが反応した。 「里の皆がどうかしたの、お姉ちゃん?」 「え、あ、ううん、何でもないの、大丈夫」 あわてて窓から視線を外したエレンはカイルを見ながら、いつもの彼女らしくないほど曖昧に取り繕う。 幸いカイルは深く気にせず、窓の向うの風景を楽しむことに注意を向けた。それを見て安心しように息を吐くエレン。 「(やれやれ、思った以上に気になっちまっているようだな。ちと教えたのは失敗だったか?)」 「(しょうがなかろうて、あの娘っこは弟に比べて聡いからのう。町での事件と町長へ呼ばれた事、急な出発を結びつける事など容易じゃろう。 ならば下手に隠し事はせず教えたほうがよい、それがあの子にとってワシらが出来ることじゃ)」 そしてその様子を見ながら、霞む様な声でやり取りするザッツとカール。
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