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ジルは遠目に観察して村の若者を呼びつけると、黒狼を持って行かせた。
「海ちゃん、黒狼の肉は柔らかくて美味いんだよ。
今日は腕を奮ってご馳走するからさ、家に泊まっていきな。
家は宿屋だから部屋もあるし、見たところ着の身着のままみたいだしね」
「・・・・・・ありがたく」
海には願ってもない話。
そこに初老の男性が、ハーフメイルを着込んだ大男を連れて二人の前にやってきた。
「ジル、黒狼の件が片付くまで迂闊に村の外に出るなと言ったろう?」
「しょうがないじゃないか、村長。
母の傷に効く薬草が切れたんだ、冒険者なんざ待ってられないよ」
村長と呼ばれた男性は溜息をついて横に立つ男性を紹介した。
「こちら、王都のギルドから派遣されてきた冒険者のザッツさんだ」
「ご紹介に預かったサッツだ。さて、なかなかメンドイ状況だな。
とりあえず、黒狼を狩ったのは誰だ?」
ジルが視線で誘導するとトロンとした瞳の海と目が合う。
「・・・・・・嬢ちゃんが? マジで?」
「・・・・・・ぶいっ」
指を2本立てて勝利を肯定する少女に、ザッツは軽い眩暈を覚えた。
「・・・・・・証拠があるんだ、信じよう。だが、嬢ちゃん、ちょっと説明させてもらっていいか?
実は俺は王国のギルド経由で村長から黒狼退治を請け負ったんだ。だから・・・」
「・・・・・・手柄も・・・報酬もいらない・・・・・・」
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