一行、南へ

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二人なら分散しても成果を上げられはするだろうが、状況を考えれば焼け石に水程度の対処に過ぎない。 「なので、御二人にはこうなった原因の調査をお願いしたいのです。 勿論根本的な解決はむりかもしれませんが、何かしら手がかりが掴めれば救援隊や調査隊が来た際に対処が素早く進み、結果として町を救う近道になると思っています」 「なんだ、つまりこうなった原因に心当たりがあるってことか?」 「……実はあの魔物が現れる直前に、町に人形遣いが現れたそうです。その人形遣いは広場で興業を行った後、去り際に狂ったように笑いながらこう言ったそうです。 『この町は獣に飲み込まれるよ、獣に食いちぎられるよ。楽しみだね、楽しみだね!』……と」 コリンズの口を通してさえ異様さを感じさせるセリフに、ザッツも片眉を顰めた。 「確かにな~んか知ってそうだな、そいつ。 んで、流れ的にはもう町には居なくて、遠くに行く前に捕まえて欲しいわけだ」 「ええ、既に数日の遅れがありますが救援隊を待っていたら、完全に手遅れになる可能性がありますので」 「……ま、それでも数日あれば行方を晦ますには十分さ。だからある程度調べて当たりはつけてあるよ」 そこでサランが口を挟む。 「そいつは出た後“夢幻の森”の中へ入っていったらしい。それを偶々近場を通った人間が目撃してる」 「あん? “夢幻の森”ってえと、つまりエルフが関係してるって事か?」 思わぬ両者の目的の合致(サラン達は知らないが)に、少しだけザッツの声に驚きの色が混ざる。
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