スキマ特急幻想郷行き

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「決心は着いた?」 紫さんが痺れを切らす。 僕はお茶を一口啜った。 冷めているそれが、時間の経過を知らせている。 「行くと言った以上は、覚悟決めて行きますよ……。そういう約束ですから」 これが答えだった。 夢だと安易に答えてしまった自分と、律義に約束を守ってしまう自分が恨めしい。 もっとも、僕に拒否することなどできなかっただろう。 選ぶ権利があるのなら、幻想郷のことなど、最初から教える必要がないのだから。 案の定、紫さんは断っても僕を連れていく気だった。 自由にしろと告げたのは、意思の確認をしたいとのこと。 普段はこちらの人間に姿を見せないそうだが、今回は気が変わったとかなんとか。 紫さんは早速、向こうへ渡ろうと投げ掛けた。 僕はそれに待ったの一言。 現代っ子がいきなり文明の衰退した世界に放り出されたら、きっと一週間ともたない。 自ら身を投げるような行動はしたくないので、僕は少しだけ準備する時間をもらった。 とりあえず使える物をリュックに積める。 ライターや懐中電灯は、きっと重宝するはず。 火や明かりは大事だよね。 保存の効く乾パンなんかも、食べ物に困った時に役立ちそうだ。 念の為に財布もポケットに入れ、紫さんに準備が終わった旨を伝えた。
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