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隙間を抜けると、そこは神社だった。
壮絶な旅になるかと思いきや、案外あっさりと到着してしまった。
こんな簡単でいいものかと考えるも、あの気味の悪い眼から早々と解放されてよかったです。
あの中は酷く酔う。
眼から浴びせられる視線もそうだが、そもそもあの中自体が、とても気持ち悪い。
さて、鳥居をくぐると、巫女服を着て境内を掃いている少女が一人。
手慣れた様子で、落ち葉を集めている。
落ち葉の色は紅と黄。
神社の周りの木々は、すでに大半が落ち葉と同じ色に染まっていた。
僕は秋を感じながら、境内に入っていった。
巫女は僕らに見向きもせず、淡々と箒を動かしている。
真ん前で立ち止まると、紫さんは笑顔で巫女に声を掛けた。
「ごきげんよう」
「珍しいわね。紫が朝から起きてるなんて」
異変でも起きるのかしら?
巫女は迷惑そうに呟く。
荒く箒を掃く音が、彼女の不機嫌さを窺わせた。
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