序章

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僕は少し苛立ちを感じた。 もし真実ならば、それ相応の理由を訊くべきだ。 遭ってしまった人間の人生が狂ってしまうのだから。 「基準? そうね……なんとなく私の目に止まった人間、もしくは強い願いを持った人間、かしらね」 ……なるほど。 「……僕はどっちだ?」 「後者ですわ」 僕はホッとした。 こんな訳の分からない輩に、なんとなく選ばれるなんて堪ったもんじゃあない。 しかし、後者となると……。 「……願いが叶うねぇ。……本当か?」 「ええ。もちろん、貴方にその気があればだけど」 彼女の答えはとても魅力的に聞こえた。 自分の願いが叶う。 もしも本当だったら、どれだけ幸せなことか…。 「けどな…僕の願いなんて大したものじゃないし。そもそもここは夢の中なんだろう。それに貴女の言葉が真実である保証もないじゃないか」 「随分と慎重ですわね」 慎重というか、いきなり夢の中に現れて願いが叶うと言われても、胡散臭いだけだ。
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