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「とにかく、その…幻想郷だったかな?行けるものなら行ってみたいけど、まず貴女が実在していることを証明して欲しいな。僕の夢の中の住人だとしたら、全て夢オチってことになっちゃうからね」
僕だって罠に掛かりたくないし、持ち上げてから落とされるのは勘弁だ。
その分ショックが大きくいから。
「ええ、解りましたわ」
えらくあっさりと、彼女は言った。
夢の中の住人と言えど、これだけハッキリ物事を言える人に、僕はなってみたい。
「それでは、そちら側で会いましょう」
「期待しないで待っ―!?」
彼女が手を振った途端に視界が暗転した。
目を覚まして最初に飛び込んだのは、見慣れた天井だった。
明かりの消えた蛍光灯がぶら下がっている。
―やっぱり夢か―
そう思ったと同時に僕は違和感を覚えた。
部屋が妙に明るい。
明かりは消えているから、この明るさが日の光だということはわかった。
僕が妙だと感じたのは日光が僕の部屋に差し込んでいるということだ。
朝なんだから当然日は昇ってるだろう、というわけではなくて。
僕は昨夜、カーテンを閉めて寝た筈だ。
お風呂に入って、部屋でくつろいで、カーテンを閉めて明かりを消して……寝た。
それをハッキリと覚えている。
なのに今、日が差し込んでいる。
それはつまり、僕以外の誰かがカーテンを開けたということだ。
嫌な予感……それから誰かの気配がする。
僕は恐る恐る身を起こし、部屋を見回した。
「……」
予感は見事に的中。
「おはよう。いい天気ですわね」
夢の中の彼女が、そこにいた。
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