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「……お茶です。あと、まぁこんなもんしかないですけど、どうぞ」
ちゃぶ台にお茶と茶請けを置いた。
不本意だが客人ということで僕が用意したものである。
「ありがとう」
一言添えて彼女ー八雲紫ーはお茶を飲む
美しい外見も相まって、その様子は優雅だ。
端から見たら平和な光景だろうが、真実を知っている僕としては今すぐお帰り願うところだ。
彼女は幻想郷からやって来た妖怪だった。
区別のできる妖怪ではなく、一人一種の妖怪というものらしい。
要するに紫さんのような妖怪は、紫さん一人しかいないということである。
妖怪、と聞いて僕は思わず、自分が食べられる姿を想像してしまった。
ビクビクしながら聞いてみると、ええ食べるわ、と穏やかに笑った(滅多にやらないらしいが)。
落ち着けるわけがない。
「ところで紫さん……その、幻想郷の話なんですけど」
彼女が実在するという時点で、僕はもう一つの世界の存在を信じざるを得なくなった。
貴女が実在すれば信じる、なんて言ってしまったものだから、逃れることはできない。
いや、夢の話で片付ければいいんだけど、双方覚えてるし言ったことは事実だし……。
……僕は誰に言い訳してるんだろう。
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