スキマ特急幻想郷行き

4/6
前へ
/38ページ
次へ
あくまで可能性があるという話であって、当然僕が幻想郷で何もしなければ、願いが叶うことはありえない。 とはいっても、僕の願いはあまり誇れるようなものじゃないけれど。 幻想郷はここより文明が遅れている。 なんでも五百年ほど前から、紫さんが考案した結界で隔離したとか。 また百年前に、外界と幻想郷の往来を防ぐ結界もできたらしく、幻想郷は僕らから徐々に忘れられていったらしい。 明治時代あたりから外界との関わりが軽薄になったと、紫さんは言っていた。 すなわち向こうの文明は、明治時代のそれということになる。 さらに、幻想郷を隔離する際、紫さんは他の地方からも妖怪を集めてきた。 元々妖怪の世界であり、人間から恐れられていた幻想郷は、妖怪の数の方が多い。 妖怪って人を食べるんだよね? 願い事云々よりも、生きていけるか心配になってきた。 きっと毎日がスリリングだろうな……。 「ハハハ……でも、そのくらいの方が、僕にとって良いことなのかもね」 「?どういう意味かしら?」 「いえ、ただの独り言です。気になさらないで下さい」 僕は向こうでの暮らしぶりを、なんとなく思い浮かべた。 一寸先は闇。 そんな言葉が脳裏をよぎった。 時間は刻々と過ぎていく。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加