42人が本棚に入れています
本棚に追加
あくまで可能性があるという話であって、当然僕が幻想郷で何もしなければ、願いが叶うことはありえない。
とはいっても、僕の願いはあまり誇れるようなものじゃないけれど。
幻想郷はここより文明が遅れている。
なんでも五百年ほど前から、紫さんが考案した結界で隔離したとか。
また百年前に、外界と幻想郷の往来を防ぐ結界もできたらしく、幻想郷は僕らから徐々に忘れられていったらしい。
明治時代あたりから外界との関わりが軽薄になったと、紫さんは言っていた。
すなわち向こうの文明は、明治時代のそれということになる。
さらに、幻想郷を隔離する際、紫さんは他の地方からも妖怪を集めてきた。
元々妖怪の世界であり、人間から恐れられていた幻想郷は、妖怪の数の方が多い。
妖怪って人を食べるんだよね?
願い事云々よりも、生きていけるか心配になってきた。
きっと毎日がスリリングだろうな……。
「ハハハ……でも、そのくらいの方が、僕にとって良いことなのかもね」
「?どういう意味かしら?」
「いえ、ただの独り言です。気になさらないで下さい」
僕は向こうでの暮らしぶりを、なんとなく思い浮かべた。
一寸先は闇。
そんな言葉が脳裏をよぎった。
時間は刻々と過ぎていく。
最初のコメントを投稿しよう!