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一瞬部屋の空気が質感を帯び「寒天」になったように感じた。鐘の余韻は太市のわずか数メートルの高さから響いている。いや、頭の中で鳴っている。 完全に目は覚めていた。寒天状になった空気が「恐怖」に変わった。 するととてつもない大きな手が上から部屋ごと撫でた様な気がした。 下に優しく押し下げられ、ゆっくりと元の位置に戻った。 父に頭を撫でられた感覚。そこで太市は本当に目が覚めた。鐘の音が遠ざかって行く。 布団から出て窓のカーテンを少しだけ開けて空を見た。夜空を波打つように真っ黒な雲が流れていた。まるでそれは“夜空を泳ぐ大きな鯨”みたいだった。
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