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「………うわ、今回は爺さんかよ……」
見た目少年の彼はとても嫌そうな顔をしました。
誰が見ても分かるくらいに露骨に嫌そうな、それはもう清々しいくらいに嫌そうな顔をしました。
「エノク、そんなこと言わないの。大体、お爺さんでもあまり変わらないでしょう?」
と、エノクという少年よりは少しお姉さんな方が、エノク少年にさとします。
それを聞くと、エノク少年はまた見るからにうっとうしそうな表情をするのです。
「いや、変わらないけどさ。でも、なんかモチベーション下がるよ。……せめて、同年代か、それかお姉さん………」
空気が爆発したときの音が、高らかに鳴り響きます。
どうやら、お姉さんの綺麗な平手がエノク少年の頬を打ち抜いたようです。
エノク少年はどうやら、何が起こったのか分かっていないらしく、呆然とそこに突っ立ちます。
「………何だってのよ。……私がこんなにエノクを………」
三点リーダをふんだんにあしらいながら、お姉さんは呟きます。
エノク少年はいまだに呆然としていて、お姉さんの言葉など耳に入ってはいません。
「………エノクの事を……………想って………」
三点リーダがさっきより三つほど増えました。
小さな声ではありますが、お姉さんはお姉さんなりに必死なようです。
が、残念ながらエノク少年の耳には届いていません。エノク少年は、なぜ自分が叩かれたのかを必死になって考えています。
どちらも必死なのに、想いは伝わらない。
これが、気持ちのすれ違いってやつですか。青春してますね。
「……………………………………………………………………」
その青春を、八四のお爺さんが生まれたままの姿で、眺めていました。
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