オレの隣の壱古さん。

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  新学期。この学校には当たり前のように席替えがある。実にめんどくさいと思うけどな。だってアミダくじを作るところからもうめんどくさいじゃないか。担任は四角く区切られた枠に適当に番号を書き出す。カツカツと軽快な音を出す黒板を眺めながら、オレは思う。 「じゃあ、席替えしてねー」 パンパンと手を叩く合図でクラスは騒がしくなる。いや、席替えになる時は元から騒がしいけど。 もう一度間違いがないか黒板を見遣る。クジの番号は15番。15番は窓際一番前。さて机を移動させるかな。腰を上げてイスを机に重ねる。 周りを見遣れば、同じようにガタガタとイスを上げていた。まぁ、イスをそのままに移動する奴もいるけどな。 「よいしょ、と」 机を運び終わればイスを下げて腰を掛ける。あぁ、机って意外に重いんだよな。 「隣、よろしく――あ」 声と共に右横に視線をやった。刹那、黒目がちな瞳とぶつかる。 「宜しく」 オレの隣は――壱古一依(いちこいちえ)さんだ。本人はこの名前が気に入らないらしい。その気持ちは解らんでもないな。もうどう聞いても一期一会だもんな。 ふと視線を下に向ければ、提げたカバンから拳銃っぽい物体が見えた。というか半分くらい出てる。 「壱古さん」 「なにかしら?」 「壱古さんて何者?」 拳銃を指差しながら言えば、壱古さんは「あぁ、見えてた」と冷静にそれを取り出した。 「これはモデルガンです。私、銃器マニアなの。といっても、そんなに詳しくはないけどね」 壱古さんは銃器マニアらしい。というか、モデルガンって持ってていいもんだっけ? 「バーン……なんて、ね」 壱古さんはオレにモデルガンを向けながらウインクをした。可愛いからもうなんでもいいや。 end. 2010/10/19  
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