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これだけ一緒に仕事をしているのは何も仕事を与えられるからだけではない。いつの間にか草野自身が彼女達のファンになってしまっていたのだ。
こんなショッピングモールの小さいステージに立っているくらいだから、彼女達の知名度はまだまだ低い。今日の客も通りすがりの買い物客か、一部のアイドルオタクだけだ。
しかし、それにもめげずに笑顔で頑張り続ける彼女達の姿は、草野に元気を与えていた。
「おはよう」
草野も挨拶を返した。するとその瞬間、彼女達は浮き足立てながら一斉に草野のもとに寄ってきた。
「草野さん、聞きましたよ! あの香田里奈(コウダ リナ)さんのバックで演奏されるんですよね!」
全く……。どうせマネージャーが得意気に彼女達に話したのだろう。
草野はマネージャーの方を見てみる。マネージャーは顔を向けた事を後悔する程の気持ち悪い笑顔で草野の方に手を振っていた。
ところで説明が遅れてしまったが、話題の渦中にある香田里奈とは、昨日マネージャーが電話で連絡のあった次の仕事相手であり、今をときめくトップアイドルである。
「いいなあ、私達も香田里奈さんに会ってみたいです!」
リリっくすのリーダーの多紗(ターシャ)が興奮気味に言った。しかしそれとは逆に、多紗の隣にいる黒英(クロエ)は少し悲しそうな顔をしていた。
「でも、私達とも演奏を続けてくれますよね?」
もう一人のメンバーである玲(レイ)も目を潤わせて草野を見つめている。こんな状況で誰が首を横に振れるだろうか。勿論、断るなんて考えもなかったのだが。
「当たり前だ。ずっと続ける。約束だ」
草野のその言葉に彼女達は「やったあ!」と、嬉しそうにはしゃぐ。その様子は何とも愛らしい。彼女達はアイドルとは言えど、どこにでもいる普通の女の子達と同じだった。
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