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ステージ上から見た客入りは目でも人数が確認できる程度のもので相変わらずだ。しかも殆どは彼女達に興味のない客だろう。当然と言えば当然だ。彼女達の知名度の低さは言うまでもなく、ここはショッピングセンターなのだから。
疎らな拍手に迎えられながら、彼女達はステージに立った。彼女達のトークは何とも初々しく可愛らしい。その和み系トークは、疲れ切ったお父さん達をステージに視線を向けさせ始めた。
ただでさえ、容易に人の心に影を落とす未来の見えないこの常闇の世界だ。こういう時局には一際、彼女達のような存在が必要なのだ。
そして、トークも一端終わりに近づき、草野は演奏の準備の為、ステージ上に出て行った。
「それでは。私達の曲、聴いて下さい!」
曲の始まりの合図と共に、草野は彼女達の力を背に受け自分の中の矛盾を掻き払うかのように、抱えたギターを強くストロークした。
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