encore.02「産業ロックは永遠に」

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 ライブも終盤に差し掛かり、残り一曲を余すだけになった。 「見に来て下さったみなさん、ありがとうございました! これが最後の曲になります」  多紗の高く元気な声がショッピングセンターに響き渡り、最後の曲が始まった。  本日のライブを締めくくる曲はアップテンポのいかにも最後らしい楽曲だ。彼女達もこれが最後だと、終盤で疲労しているにも関わらず、最初と変わらない笑顔を振りまきながら精いっぱい歌っている。  ――こういうアイドルなら、サポートギターも悪くない。  草野はそんな事を考えながら彼女達の頑張る後ろ姿を見つめていた。  曲が終わると簡単に挨拶を済ませた彼女達は、観客の拍手を背にステージを後にした。拍手の疎らさが初めと変わらないのが少しやるせない。
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