encore.02「産業ロックは永遠に」

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* * *  リリっくすとの仕事から何日か経った、まだ週も後半に差し掛かったところ。  次の日から来週の香田里奈の仕事の打ち合わせまで草野のスケジュールは真っ白。最近はこういう事も珍しくなくなった。  暗闇から決して明けない空。まるで草野の心を映し出しているかのようだ。  草野はこの日も何もする事がなかった。かと言って、家に閉じこもっているのは自分を余計に駄目にするのは草野にとっても明確だった。  心に背中を押されるがまま、取り敢えず外には出てみた。陽の光がない事が逆に草野には救いのように思えた。  こういう誰とも話さない日は考えてしまう事が自然と多くなってしまう。今の自分の事やこれからの事……。  人通りの少ない家の前の道を曲がると新旧混在した住宅街に入る。特に当てもなく住宅街の間の道を歩いていると商店街に差し掛かった。  自転車に乗った主婦や小学生が行き交う今では少なくなった古き良き商店街といったところか。電化製品を売る小さな店や肉屋、八百屋が立ち並ぶ。そしてその一角にあるCDショップ。気付けば草野はその店の前に立っていた。
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