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違うのだ、争点が。結局はアイドル。そこの質の優劣は懸念の解決には繋がらない。
草野はマネージャーが続けるこの話題に興味が持てず、傍のテーブルに置いてあった煙草に火をつけた。ジッポの蓋の閉じる金属音ではマネージャーには電話の向こうの草野の心情は伝わらず、まだ話を続けている。
「驚いて卒倒しますよ。なんたって次はあの――」
電話の向こうで最大の盛り上がりに達しようとした時にそれは訪れた。何時もながらタイミングの悪いものである。
草野は驚き過ぎて、火のついたタバコを床に落としそうになったくらいだ。
……この流れでご理解は頂けているだろうが、勿論マネージャーの話ではない。
それはさっきのテレビ番組での事。
草野は電話している間も適当な相槌を返しながら、視線と思考はテレビに向け続けていた。
「――次の今夜注目のアーティストはこちら!『ザ・クライブス』!」
MCの威勢の良い声とともに、テレビに映し出されたザ・クライブス。そのメンバーは草野の良く知るーーいや、よく知るなんて程度のものではなかった。草野にとって、それはとても懐かしく、そして……。
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