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草野が電話を終えた時、既に先程の番組も終わっていた。草野の目には番組の“彼ら”が鮮明に焼き付いていた。そして、襲い来る何ともいえない感情に耐えきれず、草野は再びベッドに仰向けに倒れこんだ。
「俺はいったい何をしてるんだろうな……」
草野は呟く。そして軽く閉じた瞼の裏に映し出されたさっきの番組の彼らのインタビューシーン。それは一言一句今聞いているかのように映像に合わせて草野の鼓膜を震わせる。
「――影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか」
「高校の同級生です。でも、一時期、有名だったバンドのギタリストなんですよ。僕が今こうやってベースを弾いているのも彼のおかげなんです」
「その人は、今もギターを弾いていらっしゃるんですか?」
「分かりません。けれど、今でも尊敬の気持ちに変わりはありません――」
何も映らなくなったテレビの砂嵐の光だけが、暗い部屋を照らし続けていた。
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