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でも、奈乃佳にはならなかったんだ。
奈乃佳には…。
「はいっ!どうぞ」
ドキンッ!
少し汚れてしまったスカートを叩き、俺に満面の笑みを見せながら渡してきた。
この動作に俺の心臓は大きく跳ね上がった。
栗色の髪。
少し赤みのかかった頬。
ピンクの唇。
全てのパーツが丁寧に並べられた顔はとても美しかった。
「どうもすみませんでした。」
彼女は深々と頭を下げた。
「いや!…大丈夫…」
この間にも俺の心臓は暴れまわっていた。
呼吸が苦しくなるぐらい…。
俺…変だぞ…。
顔を上げた彼女はまたニコリと微笑み、
「じゃあ…」
と言って去っていった。
彼女がいなくなってからも、俺の左胸は落ち着ついてくれなかった。
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