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「ん?」
俺は人混みの中で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
彼女だ…。
声をかけてみようかな…。
このときの俺は気分が高ぶっていたのか、気さくに彼女に声をかけられたのだ。
軽くなった足を持ち上げ、スキップをするように彼女の元へ歩いていった。
「あっ…」
しかし、俺は彼女の顔を見た瞬間に気持ちが沈んでいくのが今でも覚えている。
何かが喉に詰まったように、俺の体が喋ることを許してくれなかった。
さっきまで軽かった足が急激に重くなる。
彼女は─────
泣いていた。
まさか………落ちた………とか?
頭の中ではどんどん悪い方へ思考が働いていく。
彼女は嗚咽を漏らしていた。
その声がやけによく聞こえたんだ。
俺はその場から動かなかった…いや…動けなかった。
手が小刻みに震え、とても汗ばんでいた。
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