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部屋に静寂が生まれる。
なんとなく耐えられなくなった俺は携帯を開いた。
電話帳を開き、『桐島 奈乃佳』の欄を眺める。
奈乃佳…。
俺は携帯を握りしめ、発信ボタンを押した。
数回の呼び出し音。
それを聞きながら俺はずっと念じていた。
出てくれ…、出てくれ!!
〔この携帯は電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため…〕
パタンッ
携帯を閉めた音が部屋全体に響く。
携帯を握りしめていた俺の手の力が抜け、鈍い音が俺の耳に届いた。
「はぁぁぁ…」
俺は一気に息を吸い込んで、長いため息をついた。
桐島 奈乃佳(キリシマ ナノカ)
俺と同じ大学に通っている二年生。
そして…
俺の彼女。
彼女なんか初めてだから、俺は奈乃佳を大事に…大切に…守ってきた。
そう、あの日が来るまで…。
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