~水牢~

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必死で逃走を計らう水を、両手で受けた。 幾分流れ落ちる水は、両手から溢れたものだ。 水捌けのよさそうなタイルの床に足をつけた水は、我先に、と排水口へ遁走する。 馬鹿馬鹿しい。こんなことは被害者めいた妄想だと、そう割り切るのは簡単だ。 しかしどうだろう。私は、そこで潰えることなどない、深い因縁を体感している。 水は単純にそこに留まっているにすぎないとすれば、私達を苦しめる理由は何があるのか。 ヒトの気道を塞ぎ、苦しめる事でしか存在できないのか。 つまり、水からできた人間は、いったいどうして、産みの親にさえ忌まれているのだ。
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